主要サービスの比較と選び方
ChatGPT・Claude・Gemini・Copilot・Grok。2026年5月時点で各社公式ページに記載されているモデル名・コンテキスト長・料金を、すべて出典URL付きで整理する。
同じ「生成AI」でも、サービスごとに思想・得意分野・つながる道具(エコシステム)が異なります。本章は 2026年5月時点で各社公式ページに掲載されている情報 をもとに、「自分の場面ではどれを選ぶか」を判断軸つきで整理します。
1. Anthropic Claude
強み:コーディング・長文推論・指示追従精度。Claude Code 等の開発者ツールとの統合が手厚い。
弱み:画像生成・音声・動画の自社モデル提供なし。リアルタイム検索は他社に劣る。
向く人:エンジニア、長文を要約・構造化したいリサーチャー、契約書/規約レビュー業務。
避けたほうがよい人:マルチメディア生成中心の業務、最新ニュース検索に頼る業務。
モデルラインナップ(2026-05時点)
| モデル | リリース | コンテキスト長 |
|---|---|---|
| Claude Opus 4.8 | 2026-05-28 | 1M トークン |
| Claude Opus 4.7 | 既存 | 1M トークン |
| Claude Sonnet 4.6 | 既存 | 1M トークン |
| Claude Haiku 4.5 | 2025-10 | 200K トークン |
出典:platform.claude.com/docs/en/about-claude/pricing
API料金(USD / 100万トークン)
| モデル | Input | Output | Batch(50%引) |
|---|---|---|---|
| Opus 系(4.8/4.7/4.6/4.5) | $5 | $25 | $2.50 / $12.50 |
| Sonnet 4.6 | $3 | $15 | $1.50 / $7.50 |
| Haiku 4.5 | $1 | $5 | $0.50 / $2.50 |
- Prompt Caching:キャッシュヒット時は base inputの 0.1倍(90%引) [公式]
- Batch API:input/output ともに 50%引
個人・法人プラン(USD)
| プラン | 月額 | 備考 |
|---|---|---|
| Free | $0 | 基本機能のみ |
| Pro | $17/月(年払)/ $20/月(月払) | Claude Code 含む |
| Max | $100/月 または $200/月 | Pro の5倍 / 20倍利用量 |
| Team Standard | $20/seat(年)/ $25(月) | 5〜150名 |
| Team Premium | $100/seat(年)/ $125(月) | Max相当の使用量 |
| Enterprise | $20/seat + API従量 | カスタム条件 |
公式 claude.com に 円建て表記なし(2026-05時点)。日本での利用は USD 建て・為替変動の対象です。
2. OpenAI ChatGPT / GPT API
強み:最大の周辺エコシステム(GPTs / Apps SDK / Codex、画像生成 GPT Image)、音声統合。動画生成(Sora 2)は 2026-04 にアプリ/Web 終了、API も 2026-09 終了予定で動画分野からは事実上撤退。
弱み:価格段階課金が複雑、コンテキスト長制御が他社より細かい設定を要する。
向く人:何でも一台で済ませたい個人・企業、マルチモーダルを多用するクリエイター。
避けたほうがよい人:API コストを厳格に予算管理したい開発、特殊な規制ドメイン。
モデルラインナップ(2026-05時点)
| モデル | リリース | コンテキスト長 |
|---|---|---|
| GPT-5.5 | 2026-04-23 | API: 1,050,000 / Codex(gpt-5.5-codex): 400,000 |
| GPT-5.4 | 既存 | 1,050,000 |
| GPT-5.4-mini | 既存 | 公式に非開示 |
| GPT-5.4-nano | 既存 | 公式に非開示 |
GPT-5.5 は ChatGPT Plus / Pro / Business / Enterprise の既定モデル。
出典:developers.openai.com/api/docs/models/gpt-5.5
API料金(USD / 100万トークン)
| モデル | Input | Output | Batch(50%引) |
|---|---|---|---|
| GPT-5.5 | $5.00 | $30.00 | $2.50 / $15.00 |
| GPT-5.4 | $2.50 | $15.00 | $1.25 / $7.50 |
| GPT-5.4-mini | $0.75 | $4.50 | — |
| GPT-5.4-nano | $0.20 | $1.25 | — |
- Prompt Caching:キャッシュ入力は標準 input の 10%(90%引)
- Batch API:input/output 50%引
- GPT-5.5 / 5.4 は 272K トークン超 のプロンプトで input 2倍・output 1.5倍の長文加算
出典:developers.openai.com/api/docs/pricing
ChatGPT サブスクリプション(USD)
| プラン | 月額 | 備考 |
|---|---|---|
| Free | $0 | 米国は広告あり |
| Go | $8 | |
| Plus | $20 | |
| Pro | $200(標準)/ $100(2026-04-09 新設の下位 Pro) | |
| Business | $20/seat(年)/ $25(月、2026-04-02 値下げ) | 最低2名 |
| Enterprise | カスタム(150名最低) | 個別見積 |
出典:chatgpt.com/pricing / openai.com/business/chatgpt-pricing
OpenAI 公式に 円建て表記なし。iOS アプリ経由の App Store 課金では Plus が ¥3,000(税込)固定との報告があります(為替により変動)。
3. Google Gemini
強み:Google Workspace / 検索 / YouTube 連携、画像・動画理解、コスト最安水準。
弱み:日本企業のガバナンス文脈では OpenAI / Anthropic よりブランド浸透が遅い、API 提供形態の頻繁な更新。
向く人:Workspace ユーザー、大量データ処理、コスト最重視、長文 PDF 解析。
避けたほうがよい人:Microsoft 365 中心の組織、最新研究レポートで Claude/OpenAI に依拠する RAG。
モデルラインナップ(2026-05時点)
| モデル | コンテキスト長 |
|---|---|
| Gemini 3.1 Pro | 1M トークン |
| Gemini 3.5 Flash(2026-05-19 リリース) | 1M トークン |
| — | |
| Gemini 3.1 Flash-Lite | 1M(公式ドキュメント上は明示なし、API 仕様準拠) |
| Gemini 2.5 Flash | 1M |
出典:ai.google.dev/gemini-api/docs/pricing
Gemini API 料金(USD / 100万トークン)
| モデル | Input | Output |
|---|---|---|
| Gemini 3.1 Pro Preview | $2.00(≤200K)/ $4.00(>200K) | $12.00 / $18.00 |
| Gemini 3.5 Flash | $1.50 | $9.00 |
| Gemini 3.1 Flash-Lite | $0.25 | $1.50 |
| Gemini 2.5 Flash | $0.30 | $2.50 |
| Gemini 2.5 Flash-Lite | $0.10 | $0.40 |
Batch API は 50%引(出典同上)。
個人プラン(円建て公式表記)
| プラン | 月額 |
|---|---|
| Free | ¥0 |
| Google AI Plus | ¥1,200/月 |
| Google AI Pro | ¥2,900/月 |
| Google AI Ultra | ¥14,500〜¥32,000/月(2階層) |
出典:gemini.google/subscriptions
USD 参考:Plus $7.99、Pro $19.99、Ultra $249.99/月(個人プラン最上位、Veo/Imagen Pro 等のフル解放)。
Gemini for Workspace(USD)
2025年以降、Gemini は 全 Workspace プランにバンドル済(単体アドオン廃止)。
| プラン | USD/seat/月 |
|---|---|
| Business Starter | $8.40 |
| Business Standard | $16.80(または $14) |
| Business Plus | $26.40(または $22) |
| Enterprise | $21〜 カスタム |
出典:workspace.google.com/pricing
4. Microsoft Copilot
強み:Office 文書を直接編集、Teams 会議要約、テナント内データ参照(Microsoft Graph 経由)。
弱み:Microsoft 365 ベースライセンス必須で TCO が高い、API 公開は限定的。
向く人:Microsoft 365 で業務が回っている法人、情シスがガバナンスを統制したい企業。
避けたほうがよい人:Google Workspace 中心の組織、SaaS 個別契約で済む小規模チーム、最新モデルへの即時アクセスが必要な研究開発部門。
ベースモデル
Microsoft 365 Copilot は Azure OpenAI Service を介した OpenAI GPT-5 系 をベースに、Anthropic Claude(Sonnet 4.6 / Opus 4.7、2026-05-30 自動移行済) を追加選択肢として組み込んだハイブリッド構成です。Copilot Studio、Excel の Agent Mode、Word などで Claude モデルを切り替えて利用できます。
他社と何が決定的に違うか
Microsoft 365 Copilot の本質は 「テナント内データへのグラウンディング」。ChatGPT / Claude / Gemini が「汎用AI + 自分でアップロードしたファイル」で動くのに対し、Copilot は 社員のメール、Teams 会話、SharePoint、OneDrive を Microsoft Graph 経由で横断検索し、回答の根拠にできる 唯一のサービスです(Entra ID の権限を尊重)。
- 代替不可な機能:Outlook メール下書き、Teams 会議の議事録化(参加者発言の紐付け)、Excel の Agent Mode(実セル操作)、Word の校閲モード統合、SharePoint 全文横断検索
- コスト構造:Microsoft 365 ベースライセンス(E3/E5:$36〜57/seat)+ Copilot $30/seat。合計 $66〜87/seat/月で ChatGPT Business($20-25/seat)の3倍前後
出典:Microsoft Learn: Microsoft 365 Copilot Release Notes / Copilot Studio 公式ブログ(2026/5)
個人プラン(円建て公式表記)
2026-05 時点で、従来の単体「Copilot Pro」は Microsoft 365 Premium に統合 されています。
| プラン | 月額 |
|---|---|
| Microsoft 365 Personal | ¥2,130/月 |
| Microsoft 365 Family | ¥2,740/月 |
| Microsoft 365 Premium(Copilot 機能内蔵) | ¥3,200/月 |
出典:microsoft.com/ja-jp/microsoft-365-copilot/pricing/individuals
法人プラン(円建て公式表記)
| プラン | 円建て価格 |
|---|---|
| Microsoft 365 Copilot Business(一般法人) | ¥2,698/user/月(年払・割引中、通常 ¥3,148)/ ¥3,778/月(月払) |
| Microsoft 365 Copilot(大企業向け) | ¥4,497/user/月相当(年払、税抜、USD $30 換算) |
別途 Microsoft 365 のベースライセンスが必要です。
出典:microsoft.com/ja-jp/microsoft-365-copilot/pricing/enterprise
5. xAI Grok
強み:X(旧 Twitter)リアルタイム連携、画像生成(Aurora)、検閲が緩めの応答傾向。
弱み:日本語精度・法人ガバナンスは他社に劣る、エンタープライズ実装事例が少ない。
向く人:SNS マーケ、トレンド調査、X 有料ユーザー、開放性を重視する個人開発者。
避けたほうがよい人:医療・金融・公共などの規制業界、社内コンプラ要件の厳しい法人。
モデルラインナップ(2026-05時点)
| モデル | リリース | コンテキスト長 |
|---|---|---|
| Grok 4.3(最新フラグシップ) | 2026-04-30 | 1,000,000 トークン |
| Grok 4.20 系 | 既存 | 1,000,000 トークン |
| Grok build 0.1 | early access | 256,000 トークン |
参考:旧 Grok 4 オリジナル版は 256K トークン、Grok 4 Heavy(マルチエージェント推論)も 256K。
出典:docs.x.ai/docs/models/grok-4.3
API 料金(USD / 100万トークン)
| モデル | Input | Output | Cached input |
|---|---|---|---|
| Grok 4.3 | $1.25 | $2.50 | $0.20 |
| Grok 4.20 系 | $1.25 | $2.50 | — |
Grok 4.3 は段階課金(トークン量での倍率変動)なし。旧 Grok 4 オリジナル版は 128K 超で input/output ともに2倍課金が適用される旧仕様でしたが、Grok 4.3 では撤廃されています。データ共有プログラム参加で月 $150 までの無償クレジット。
コンシューマプラン(USD)
| プラン | 月額 |
|---|---|
| Free | $0(制限付) |
| SuperGrok Lite | $10(2026-03-25 開始) |
| SuperGrok | $30/月 / $300/年 |
| X Premium+ | $40/月($395/年、Xバンドル) |
| SuperGrok Heavy | $300/月(Grok 4 Heavy 含む) |
| SuperGrok Team | $30/user/月 |
6. オープンウェイト系(自社運用可)
| モデル | 提供元 | ライセンス | 主な特徴 |
|---|---|---|---|
| Llama 系 | Meta | コミュニティライセンス | 汎用LLM。日本語特化派生(ELYZA, Swallow など)多数 |
| DeepSeek | DeepSeek | MIT | 推論重視。コスト効率を強調 |
| Mistral / Mixtral | Mistral AI | Apache 2.0 等 | 欧州製。多言語性 |
| Qwen | Alibaba | モデルにより異なる | 中国語圏で強い。日本語も対応 |
オープンウェイトは「重みが公開され、自前のGPU/クラウドで動かせる」モデルです。機密データを外に出せない用途、深いカスタマイズ(Fine-tuning)、推論コストの完全コントロール が必要なときの選択肢となります(第4章 4.3、第6章 6.2参照)。
用途別の選び方フロー
AIコーディング専用ツール(Cursor、Claude Code、Windsurf、Copilot、Aider、Cline、Devin など)の詳細比較・方法論・ベストプラクティスは 第13章 AIコーディング を参照してください。
[Q1] 自分が扱う情報に「外に出せないもの」が含まれるか?
└ Yes → Q2 へ
└ No → Q3 へ
[Q2] それは「法務・経理・顧客個人情報・未公開IR」級か?
└ Yes → 法人プランの「学習させない契約」必須、または自社環境オープンウェイト
・ChatGPT Enterprise / Claude for Enterprise / Gemini for Workspace
・もしくは Llama 系 + 自社クラウド
└ No → 個人プランのデータ取り扱い設定で「学習に使わない」をONにすれば多くの場合OK
[Q3] 何を一番やりたいか?
├ メール / 議事録 / 企画書など文章中心
│ → ChatGPT / Claude / Gemini いずれも高水準。「普段Officeを使う」なら Copilot 統合が便利
├ 長い資料・PDF・画像・図表の読み取り
│ → Gemini が強い(コンテキスト長と画像理解)。Claude も高品質
├ コードを書く / 長時間の自律タスク
│ → Claude(Claude Code 等の開発ツール統合が手厚い)
├ Word / Excel / PowerPoint と一体で使いたい
│ → Microsoft 365 Copilot 一択
└ いま起きている話題・SNS連携
→ Grok(Xと連携)。他社も検索機能付きだが、Xアカウントとの統合は独自
[Q4] 予算は?
├ まず無料で試したい → 各社の無料枠で十分にカバーできる業務多い
├ 個人で本格利用 → サブスク(月20ドル前後)が損益分岐の目安
└ チームで導入 → 1人月20-30ドル × 人数。年契約で割安に
個人で使うなら — 無料 vs 有料の損益分岐
| 利用頻度・用途 | おすすめ |
|---|---|
| 月に数回、軽い質問・調べもの | 無料プラン で十分 |
| 週数回、業務メールや文章作成 | 無料で様子見 → 制限に当たり始めたら有料 |
| ほぼ毎日、長文・画像・コード等 | 有料サブスク(月20ドル前後) が早い・速い・賢い |
| 1日に何十回も使う / API連携したい | 有料サブスク + 必要に応じて API利用 |
法人で導入するなら
個人サブスクをそのまま社員数分契約するのは、ガバナンス上推奨されません。法人プランは以下が個人プランと異なります。
データを学習に使わない
主要法人プランは、入力データを提供元のモデル学習に 使わない契約 が標準。機密情報の流入リスクが大きく下がる。
監査ログとSSO
SAML/SCIM等のSSO連携、利用ログの出力、IP制限などが整備されている。情シスが管理可能になる。
認証・準拠
SOC 2 Type II、ISO 27001/27018、HIPAA、GDPR対応など、業界・地域の認証を持つプランがある。
サポートとSLA
エンタープライズ向けの稼働率SLA、技術サポート、導入支援がつく。
導入時の検討項目:
- データ保管リージョン(日本国内に置けるか/米国・EUか)
- 学習利用の停止が明文化されているか
- 退会時のデータ削除ポリシー
- 既存業務システムとの連携(SSO、Microsoft 365、Google Workspace、Salesforce等)
- API利用枠と料金体系(席課金とは別途)
「学習に使わない」が明文化されている主要プラン
| 提供元 | 該当プラン | 出典 |
|---|---|---|
| OpenAI | ChatGPT Team / Enterprise、API(既定で学習対象外) | openai.com/enterprise-privacy |
| Anthropic | Team / Enterprise、API(既定で学習対象外) | anthropic.com/legal/commercial-terms |
| Workspace 全プラン、Gemini API(有料利用時) | support.google.com/a/answer/15706919 | |
| Microsoft | Microsoft 365 Copilot(テナントデータは学習対象外) | learn.microsoft.com/copilot/microsoft-365/enterprise-data-protection |
日本企業特有の検討事項
- 円建て請求書の入手可否:Microsoft / Google は日本法人請求書あり、OpenAI / Anthropic は USD クレカ主体(リセラー経由で円建て可)
- データ保管リージョン:ChatGPT Enterprise の Tokyo リージョン、Claude のリージョン選択肢を確認
- 日本語精度の体感差:Gemini / Copilot は Workspace / Office との UI 統合分強い。Claude / ChatGPT は素の日本語生成品質が高い
- 国内代理店経由の選択肢:Microsoft はパートナー多数、ChatGPT / Claude はソフトバンク等の限定パートナー
サブスク vs API — どちらが安いか
「APIの方が安いって聞いた」は半分本当で半分嘘です。実態は 使い方による。
具体例:営業1名が毎日30回 ChatGPT で提案文を作成
- サブスク(Plus $20/月):上限内で完結 → $20/月
- API(GPT-5.5、平均1リクエスト 2,000 入力 + 1,000 出力トークン):30回 × 22営業日 × ($5×2K + $30×1K) / 1M = $26.4/月 + 開発コスト
- 個人利用は明確にサブスクが有利。社内ツール化して10名共有なら API が逆転。
主要用語の補足
- コンテキスト長 / 1M トークン:1M トークン ≒ 日本語で約50〜100万文字、書籍数冊分。長文 PDF やコードリポジトリ全体を一度に読ませられる
- Batch API:即時応答不要のジョブを夜間にまとめて処理。約50%引(OpenAI / Anthropic 共通)
- Prompt Caching:同一の冒頭プロンプト(システム指示や長い背景情報)の再利用で約90%引(Anthropic)
| ケース | サブスクが有利 | APIが有利 |
|---|---|---|
| 1人が1日10〜30回チャットで使う | ✓ 月20ドルで使い放題 | — |
| 月に数千回〜数万回、自動処理に組み込む | — | ✓ 従量課金で必要分だけ |
| 顧客向けプロダクトに組み込む | — | ✓ APIしか選択肢がない |
| バッチで大量処理 | — | ✓ 各社「Batch API」で約50%引 |
| 軽い社内ツールを作る | サブスクのCustom GPT/Projectsで足りる場合も | チームで使い回すならAPI |
100万トークンは 日本語で50〜100万文字 相当(書籍数冊分)。簡単な要約や分類なら 1リクエスト数円〜数十円 のオーダーです。
コスト設計の実務 — 見積もりから運用まで
API コストの予測と圧縮は、本番運用の生死を分けます。料金表だけ眺めても見積もれず、①トークン数の概算 → ②キャッシュ・バッチが効く設計 → ③タスク別モデルルーティング の3段で考えるのが現実解です。
日本語トークンの概算法
英語と日本語ではトークン効率が大きく異なります。GPT/Claude 系のトークナイザは英語1単語≒1〜2トークン、日本語1文字≒0.7〜1.5トークン(モデル世代で変動)。実務見積もりの目安:
| テキスト | 概算トークン |
|---|---|
| 日本語 1,000 文字 | 約 700〜1,500 トークン |
| 英語 1,000 単語 | 約 1,300〜1,500 トークン |
| A4 1枚(日本語、約 800 字) | 約 600〜1,200 トークン |
| 議事録 60 分(書き起こし、約 8,000 字) | 約 6,000〜12,000 トークン |
| 法令1条文(約 200 字) | 約 150〜300 トークン |
精度の高い見積もりが必要なら、OpenAI の tiktoken、Anthropic の count_tokens API、Google の Gemini API count tokens を用いて事前計測する。
Prompt Caching が効く設計・効かない設計
Prompt Caching は「冒頭から一致するプロンプト部分」の再計算を省略する。各社で挙動が微妙に異なるが、共通する設計指針:
- 効く:システムプロンプト・固定の前提資料・FAQ 用ナレッジを プロンプト先頭 に置く(5分以上の TTL を持つキャッシュが多い)
- 効かない:ユーザー入力を冒頭に置く、毎回別の資料を流し込む、毎回
temperatureを変える - 目安:同じシステムプロンプトで月 1,000 回以上呼ぶなら、キャッシュヒット率 70〜95% でコストが 1/5〜1/10 に
- 注意点:キャッシュ書き込みは通常 25% 増し(Anthropic)、ヒットして初めて元が取れる設計
参考:Anthropic Prompt Caching / OpenAI Prompt Caching(参照日 2026-06-11)
Batch API の使いどころ
Batch は「24時間以内に返れば良い」処理に対し約 50% 引。
- 向く:夜間の大量分類・要約、ドキュメント前処理、過去ログの一括ラベル付け、評価セットでのモデル比較実験
- 向かない:対話・即時応答・ユーザー待ち UI
タスク別モデルルーティング
「全部を最上位モデルに投げる」のは典型的な無駄。安いモデルに落としても精度が落ちないタスクを切り分けて、ルーティングする:
| タスク | 推奨モデル | コスト比(Opus/GPT-5 を 1 とした目安) |
|---|---|---|
| 分類・抽出・JSON 整形 | Haiku 4.5 / Gemini 3.5 Flash / GPT-5.4-mini | 0.05〜0.15 |
| 通常の文章作成・要約 | Sonnet 4.6 / Gemini 3.1 Pro / GPT-5.4 | 0.3〜0.5 |
| 多段推論・コード生成・複雑な分析 | Opus 4.7/4.8 / GPT-5.5 | 1.0 |
| 失敗時のリトライ | 1段上のモデルに自動昇格 | — |
実装パターン:①まず安いモデルに投げる、②自己評価(信頼度低 or JSON schema 違反)なら1段上のモデルに再投入、③それでも失敗ならアラート。これだけで月コストが半減した実例が複数報告されています。
月額シミュレーションの雛形
社内利用 100 人、平均 1 日 20 回チャット、平均 2,500 入力 + 1,500 出力トークン、月 22 営業日のケース:
| プラン | 月額試算 | 補足 |
|---|---|---|
| ChatGPT Business($25 × 100 席) | $2,500 | 利用回数無制限・運用最小 |
| Sonnet 4.6 API(無対策) | $4,400 | 100 × 20 × 22 × ($3×2.5K + $15×1.5K) / 1M |
| Sonnet 4.6 API + Prompt Caching 70%(実効単価 0.4 倍) | 約 $1,800 | システム指示が共通の場合 |
| Sonnet 4.6 API + ルーティング(70% を Haiku に落とす) | 約 $2,000 | 単純タスクは Haiku |
| Sonnet 4.6 API + Caching + Batch 30% | 約 $1,200 | 夜間集計を Batch 化 |
結論:シート単価のサブスクと API の境界線は「100 人以下=サブスク優位」「100 人超+運用工数を割けるなら API + 最適化」が目安。詳細試算ロジックは 第14章 14.2 コスト前提の明確化 と整合。
「どれか1つ」ではなく「使い分ける」のが現実解
各社は数週間おきに新モデルを出し、性能差は急速に縮まっています。「最強」を追いかけるより、用途ごとに2-3個を使い分けるのが2026年の標準的なスタイルです。たとえば:
- 普段の文章作成は ChatGPT、長文資料読みは Gemini、コードは Claude という個人の使い分け
- 法人は Microsoft 365 Copilot を全社展開しつつ、研究開発部門だけ Claude API を別途契約 といった組織レベルの使い分け
切り替えのコスト(プロンプトの作り直し、データの移行)は小さいので、新モデルが出たら自分のよく使うタスクで比較する習慣 を持つと、相場観が育ちます。